土地や建物が相続財産に多く含まれ、相続税の納付のためのキャッシュが少ない場合、不動産の売却による現金化あるいは物納といったことが起きてしまい不動産を手放すという事態が生じてしまいます。
そのため、相続前から将来の相続税対策を行うことは大切です。 特に平成27年には相続税の増税が予定されております。
また、中小企業のオーナーの方は、自社の株価が現在いくらか把握されていない方が非常に多くいらっしゃいます。上場している会社だけでなく、中小企業あるいは家族で経営している同族会社でも会社の株価は変動し価値が変わります。
そのため、経営者の方の場合、現在の会社の株価はいくらなのか、高騰している場合には株価を引き下げることも相続対策として必ず必要になってまいります。
当センターでは、相続が発生する前の節税対策についても積極的に対応しております。
中小企業の会社の株式の引下げ対策について説明すると以下のようになります。
対策していない場合の問題点
■ 株価高騰による相続税の納税資金の問題
■ 後継者以外の者が株式を相続することによる経営支配の問題 ⇒生前にいかに相続まで見据えた事業承継対策ができるかがポイントとなります。 対策にあたっては、「取引相場のない株式」がどのように評価されるのかを考え、その構成要素を細分化し、株価が低くなるようにその対策を行います。
「取引相場のない株式」の評価方法
①株主の判定・・・その株主が支配株主等、それ以外の株主のいずれであるかの判定
②会社規模の判定・・・その会社が大会社、中会社、小会社のいずれであるかの判定
③特定評価会社等の判定・・・その会社が特定評価会社に該当するかどうかの判定 ④評価方法の適用・・・以上の判定に基づいて、各区分に応じた評価方法を適用し、それぞれの株式を評価
①について
支配株主かそれ以外の株主かを判定します。支配株主は「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」が適用され、その他(少数株主)には「配当還元方式」が適用されます。
株価イメージ:純資産価額方式>類似業種比準価額方式>配当還元方式 ⇒後継者の場合、基本的に支配株主に該当します。
※類似業種比準方式・・・構成要素は、配当、利益、純資産のため、株価を引き下げるにはこの構成要素を引き下げる必要があります。とくに利益は3倍考慮されますので、会社の利益を圧縮する必要があります。
※純資産価額方式・・・資産及び負債を、財産評価基本通達により評価した金額により、1株あたりの株価を算定します。含み益の多い会社では、株価が帳簿価額より高くなります。 そのためこの場合には、株価の算定にあたって、類似業種比準価額の割合が多く加味される会社規模への変更を目指します。
②について
会社規模により評価方法が決まります。
会社規模の判定は、第一に従業員が100人以上いる場合、大会社となります。
従業員が100人未満の場合には、従業員数、総資産価額、取引金額により、中会社・小会社に区分します。
□大会社の評価方法 類似業種比準価額となります。ただし、純資産価額とのいずれか低い価額を選択することができます。
□中会社の評価方法 類似業種比準価額と純資産価額の会社規模に応じた折衷方法により評価した金額です。ただし、純資産価額とのいずれか低い価額を選択することができます。 類似業種比準価額×L + 1株あたりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)×(1-L)=評価額 <Lの割合> 中会社・・・大0.9 中0.75 小0.6 ⇒中会社でも小のほうが、純資産価額の影響を多く受けます。
□小会社の評価方法 純資産価額となります。ただし、類似業種比準価額×0.5+純資産価額×(1-0.5)のいずれか低い価額を選択することができます。
③について
株式保有特定会社、土地保有特定会社、比準要素数1または0の会社、開業後3年未満の会社は、原則として純資産価額方式により評価されますので株価が高くなってしまいます。
そのため、株式保有割合の引下げ、土地保有特定割合の引下げ対策を行います。 ただし合理的な理由もなく行った資産構成の変動については、その変動はなかったものとされますのでご注意ください。
自社株評価引下対策
(1)利益の圧縮、配当の中止、純資産の減少
役員退職金の支給、含み損のある資産の売却、損金性の高い保険への加入、ボーナスの支給、借入金で固定資産を取得、普通配当を減らす、短期前払費用の損金処理 参考)類似業種比準価額方式は、帳簿価格でのみ計算されます
そのため含み損のある資産(不良在庫や不良債権)がある場合、そのまま計算上加味されてしまいますので、しっかりと整理したうえで事業承継を行う方が得策です。
(2)従業員持株会に譲渡
少数株主は評価額の低い配当還元価額を適用できます。
(3)事業譲渡による株価引下げ
①高収益部門を独立させ、別会社とします。
②利益部門が独立したことにより本体は利益が下がるため、類似業種比準価額はさがります。
③グループでとらえると現状と変わらない状態で株価は下がります。
(注意点)
・会社規模の変更により類似業種比準価額の影響が少なくなると、逆に株価が上昇することもありますので注意が必要です。 ・比準要素数1または0の会社にならないようにします。
(4)会社規模の変更による評価引下げ
①大会社は類似業種比準価額だけで評価できますが、小会社になるほど純資産価額の計算割合が高くなります。
そのため、会社規模の変更により評価を引き下げます。
②古くから土地を有する会社の場合には、含み益を多く抱えているため、会社規模の変更により純資産価額の影響を受けないようにすれば評価は下がります。
③土地保有特定会社、株式保有特定会社に該当しないようにします。
(5)借入金で賃貸不動産を購入し、純資産価額を下げる
賃貸用の不動産取得後3年を経過すると、土地は路線価や倍率方式等、建物は固定資産税評価額で評価できるようになります。
また土地については貸家建付地、建物については貸家としての評価減が適用できます。